脈診をするとなにがわかるの?

鍼灸施術を始める前に、また途中に、そして最後にも必ず脈診をいたしますが「なにを診ているんだろう?」と疑問に思われることかと思います。

どなたでも手首の脈を触れてみますと、よく触れる人、わかりにくい人と様々あります。たとえば風邪のひきはじめで悪寒がして熱っぽいときなどは脈は強くみやすくなっていますし、手足が冷えやすい人は脈は細くみにくくなっているものです。

脈診で病人の体の状態を知る

鍼灸施術をするには脈診は欠かせません。病んでいる人の体の状態を知るために必要なことなのです。これをしないと真っ暗な道を手探りで歩いているようなもので治療方針も治療効果も正しくつかめないのではないでしょうか。しかしこの技術を習得するのは大変難しく昔から脈診何十年とか言われてきたものです。そのため最近はこの技術が敬遠されてきているのではないでしょうか。

おおよその脈診でわかること

脈を診る方法は諸説あるのですが最初に脈を診ることで得られる情報を簡単にまとめてみます。

それでは何を診ているのかというと、

脈が浮いてよくわかる人、深いところでみにくいひと → 病が浅いか、深いかを診ます。(一概には当てはまらないものもあります)

脈が速い人、遅い人 → 熱があるか、冷えているかを診ます。(一概には当てはまらないものもあります)

脈が強い人、弱い人 → 本来元気な人か、虚弱な人か。病気に対する抵抗力の強さがわかります。

その他、脈の流れる状態が良いか、ひっかかるような脈かなども見ます。これは気の流れ具合や血の滞りなどを診ます。

ここからだけでもおおよその体の状態が推測され施術の方法(鍼の仕方にも)に役立つのです。

経絡治療講話 - 本間祥白 著 - 参照 医道の日本社

次に体の五臓六腑の働きの状態を診ます

一般には手首の脈を片方3本の指で、両方合計6本で診ます。

手首側が体の上部、

真ん中が体の中間の部、

そして手首から一番遠くの指は下半身の部を診ることになります。

両手の各指6本で浅いところでみる脈、深いところでみる脈、そしてその中間でみる脈、これで臓と腑の状態を見ることになります。これは慣れるまでなかなか難しいものです。

これらの脈診を総合判断してやっと施術方針(証・あかし)の要素のひとつが抽出されることになります。

わたし流の脈の見方

諸々の脉、胃の気ある時は生き、胃の気なき時は死すと。諸々の脉、潤いありて、和緩なるを胃の気ありというなり。胃の気の候いよういろいろ口伝ある事なり。(脉法手引草)

わたしは細かい脈診の項目に拘泥するよりこの「胃の気(生命力、病に打ち勝つ力でもあろう)」ということに注目して施術効果を確かめるようにしています。施術がうまくいきますとこの胃の気がしっかりしてきますし術者も本能的といいますかとても気持ち良くなる感覚があるものです。これは理屈で脈が硬いとかやわらかいとかいうことで判断するものではなく、「直接体感できる」ものなのです。鍼灸術はいくら緻密で高度な情報分析をしても結局のところ最後は主観と技術いう大きなフィルターを通すことになるためこのような方法もありとおもいます。術者と被施術者がともに心地よくなるような鍼灸術ができることを理想に努力していきたいと常々考えています。鍼灸術は我々の普段の五感と理屈を越え未知の世界に続くおもしろいものであると感じています。

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